|
|
|
|
|
|
|
やまなみ10月号 |
|
| 漢字のはなし 校長 堀井 重樹 | |
|
堀井重樹校長
|
補習校で学ぶ子ども達にとって、家庭での学習は知識、理解を定着させる上で大きなウエイトを占めます。4校を回っていてよく子ども達から、「校長先生、どうしたら漢字を覚えられるの?」とか「漢字を覚えるコツを教えてください。」という質問を受けます。小学生も中高生も漢字は大の苦手なようです。これは何も補習校の子ども達に限ったことではありません。日本国内の子ども達にも同様に言えることです。本を読まないから字を覚えない。字が読めないから本を読まない。視覚に訴えるマンガ本が好調な売れ行きを続けているのも分かるような気がします。読書離れの負の相乗作用は至る所で出ているようです。それは子ども達側の問題ばかりではありません。教える側の大きな課題でもあるのです。 漢字教育の効果的な実践指導は、今まで一部の研究者によって進められてはきましたが、系統立てた指導が少なく、新出漢字の量に対して適切な指導が見つからないことや追いつかない現状がありました。一つは字源解釈が研究者によってさまざまに異なることから、また一つは漢字の複雑さによることから来ているのかも知れません。 中国4000年、約5万字の漢字が時代の変遷によって整理、統合され、簡略化され、類型化され、本来の意味から遠く離れてしまったことも原因の1つでしょう。 中学生の頃、国語専科のM先生は、『騒』という字を指導するに当たって「馬の又に虫が入ったから騒ぐのだ。」と教えてくださった事があります。それは子どもなりに、納得解釈して一つの覚える手だてとなりました。本義が又に虫が入ったからではないにしても、大枠を外しさえしなければ、漢字に子ども達の興味、関心を引き寄せるためにはよい指導法であったように思えます。
漢字は本来、かたどり文字(絵文字、象形文字)を基本文字にしており、その後、漢字の数が増大するに従って、意味を重視した合わせ文字(会意文字)へ、さらには音を重視した形声文字へと発展を見せます。絵を形取った象形文字は説明できても、部首と音記号で組み合わさった形声文字は厄介としか言いようがありません。その形声文字が常用漢字の大半を占めるわけですから、子どもたちも苦労するわけです。けれど、語彙の範疇を示す記号化された基本形は、部首として名残を留めているわけですから、そのおおもとの意味(部首の意味)を押さえつつ、子どもなりのストーリーを漢字の中に込め、覚えればよいわけです。1画、2画、3画と機械的に覚えるようなやり方では無駄であるだけでなく、漢字嫌いな子どもを作っていくし、音を同じくする漢字の使い分けや熟語の作り方にも影響を及ぼしてくることになります。 記号化された部首の謎が解ければ、漢字はさらに面白くなり、理解するに従って進んで自分から調べるようにもなります。それこそ漢字学習の『総合学習版』と言えます。謎解きはミステリーで楽しいものです。いかにうまく話を組み立て漢字を覚えるか。(象形文字や会意文字は本来そういうものでした。)難解と言われる形声文字にストーリーを込め覚え使い込んでいけば、もっと身近な文字として定着するのではないでしょうか。 新学習指導要領では、「内容の取り扱い」の中で、「児童の学習の負担に配慮しつつ、必要に応じて前後2学年の学年において指導すること」と明記しています。学習指導要領は最低の必要基準を示すわけですから、子ども達が漢字の謎解きに興味関心を示し、自ら進んで学習に向かっていけば、学年の域にとらわれ、限定する必要もないということなのです。 例えば、魚(象形文字)という字を学習する時、記号化された魚という字を調べ、「ク」の表す意味や「田」にあたる部分、「灬」の示す部分が何を簡略したものなのかが大枠で解れば、それと同じような手法で(例えば象、亀、角、争等)絵を簡略化させた古代人の心に迫ることができ、子どもなりに、何となく漢字に親しみを感じ学習への興味付けが始まるわけです。興味、関心は「調べ学習」へと進み、学習意欲がきっと高まるはずです。ご家族でお寿司屋さんに行った時など、湯飲みに書かれてある「魚」へんの字を親子で一気に覚えてもよいわけです。 保護者の方から同様な漢字の指導法を聞かれる時、「字源辞典」をご家庭に一冊置かれ、子ども達と謎解きに挑戦してみてはいかがですか?と答えています。「字源辞典」は家庭でのコミュニケーションを生み出す辞典になるかも知れませんね。 2002年10月 |
|
© 1999-2004 San Francisco Japanese Language Class INC. all rights reserved since10/27/1999. |
|