カリフォルニアの風

サンフランシスコ日本語補習校通信

2007年度  第6号

2007106()

日本の心、アメリカの心

サンフランシスコ日本語補習校校長 植木進策

10月に入り秋の季節となりました。日本では、紅葉が美しくなるころだと思います。保護者のみなさまには、前期に続き後期もご支援ご協力いただきますようよろしくお願いいたします。

さて、本校では、「補習校の中では日本語を使おう。」ということを今年度の1つの重点目標として児童・生徒に呼びかけ、その指導をしております。また、保護者の方には、お家の中でも、日本語のシャワーを浴びさせて欲しいこと、あるいは日本語を話す時間帯等を決めていただき日本語を話す機会を増やしていただくようお願いしています。この活動はこれからも続けていきます。しかし、中にはこのようなことも起きてきます。先生からの報告ですが、英語を話している児童がいたので、「日本語で話そうね。」と言ったところ、「僕はネイティブだから。」といって、英語で話しを続けたというのです。もちろん先生はこの児童に取り組みの目的を話し指導をしたとのことですが、私は、「ネイティブだからこそ日本語を話す努力が人一倍いる。」と考えます。アメリカは多民族国家であり、アメリカを愛する心を持つと共に、自分のルーツの民族を愛し、誇りを持てる国、それがアメリカだと思うのです。

このことに関係してあるお話を聞いたことがあります。それは次のようなお話でした。その方がアメリカの市民となるための宣誓式に出席された時のことでした。宣誓式の最後に担当官がこう話されたそうです。「あなたはこれからアメリカ市民です。しかし日本を捨てる必要はありません。日本の心を持ってアメリカに貢献してください。」この方はこのことばに大層感激をされたそうです。私もアメリカのふところの大きさとアメリカ人の心を感じたような思いになりました。

また、このようなお話もお聞きしました。その方は若いころ、思うところがあってイスラエルの大学に入られたそうです。生活を切りつめ、食べるものにも事欠きながら、一心不乱にヘブライ語を学び、イスラエルの学生に負けないよう学業に励まれました。ある時、教授から学生に向かってヘブライ語で、1月から12月まで言える人?という問いかけに対し、イスラエルの学生達は1月から5月までぐらいは言えるが、12月まで言える人はいなかったようです。そこでその方は日頃の勉学の成果を出され、みごと間違えずに全て答えられました。「この東洋の1学生はすごい。」と教授も他の学生も「東洋の1学生」を賞賛したということです。しばらくたち、東洋に関係する授業の時間「日本について」の中で日本の体制の話になり、教授から「天皇裕仁とは誰か、何をしているのか、本当に現人神なのかどうか。ちょうどここに日本の学生がいるから聞いてみよう。」と言われたそうです。残念ながらその方は深く答えることが出来ず、今までの賞賛のトーンが下がったそうです。それから自分の国について理解していないことを反省され、また日本について猛烈に勉学をされたそうです。

そこには、世界中どこに行っても、どこの国の人になっても、自分のルーツを大切にする心、それを誇りに思う心は大切であり、アメリカの宣誓式で話されたことと通ずるところがあると思います。「僕はネイティブだから。」と言った児童も、ぜひ、日本を大切にし、自分のルーツを誇りに思い、私たちのことば「日本語」を学んで欲しいと思います。それには、本校での指導もさることながら、何よりもご家庭での日頃のお話がなにより大切です。そして家族を愛し、自分がこの家の一員であることに誇りを持ち、思春期を迎えた子供たちが、より確かなアイデンティティーが持てるよう、どうぞよろしくご指導の程お願いいたします。そして、本校が進めています「日本語を話そうキャンペーン」につきましても、是非、ご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。